4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)は、エステル基の末端に水酸基を持つ特殊アクリル酸エステルです。
分子内にラジカル重合性の二重結合(アクリル基)と、化学反応性の末端水酸基を併せ持つことにより、共重合後のアクリルポリマーに対して優れた機能性を付与することが可能です。
一般的には、アクリルポリマー中に共重合ユニットとして4HBAを組み込むことにより、後からイソシアネート化合物や酸無水物化合物と反応し、架橋構造を形成することが可能です。
この際に、類似の短鎖水酸基型アクリル酸エステル化合物、例えば2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)や2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(2HPMA)などと比較して、架橋反応をする水酸基が結合したエステル基の炭素鎖が長いことにより、架橋反応性に優れます。架橋反応性に優れる理由は、水酸基の結合したエステル基が長いことによる反応の自由度が高いことや、他の、エステル基が嵩高いアクリルモノマー(例えば、アクリル酸ブチルやアクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルなど)と共重合した場合に、短鎖エステルである2HEAや2HPAなどと比較して、水酸基がより露出しやすいためと推測されます。
また、2HEAや2HPA、2HEMA、2HPMAと比較して架橋反応性に優れることで、よりしっかりした架橋が架かり、さらに架橋基がより長く自由度が高い構造のため、架橋後に得られるアクリルポリマーの物理的特性は、柔軟性や可撓牲、耐擦傷性、耐薬品性などの点で優れます。
共重合の方法は色々あり、溶剤系や水系でもご使用いただけますが、ラジカル重合性の二重結合がアクリル基であるため、メタクリル基型の水酸基型エステル化合物(2HEMAや2HPMA)と比較して、紫外線硬化性(UV硬化性)に優れるため、紫外線硬化型樹脂(UV硬化型樹脂)の配合原料としても有用です。
もちろん、2HEAや2HPA、2HEMA、2HPMAと同様に、任意のユニットと水酸基を先に反応させて(メタ)アクリルオリゴマー化合物に変性してから、例えば紫外線により(メタ)アクリル基を重合させ、紫外線硬化物を得ることも可能です。
更に、エステル基の末端水酸基をそのまま極性基として導入し、アクリルポリマーの改質をしたり、反応性希釈剤として使用することも可能です。
4HBAは、エステル基が程よく長いアクリル酸エステル型であるために、ホモポリマーのTg(ガラス転移温度;ガラス転移点)が2HEAなどと比較しても低く、アクリルポリマー系粘着剤用の架橋用原料としても優れており、粘着剤の接着性や密着性の改善にも効果を発揮します。 (4HBAのホモポリマーTg:-40℃、2HEAのホモポリマーTg:-15℃)
4HBAは、2HEAや2HPAと比較すると、分子量がより増加しているために、皮膚一次刺激性(P.I.I.;Primary Irritation Index)の値も相対的に低く(P.I.I.:3.0)なっています。 4HBAの類似の関連商品としては、エステル基の中間に脂環式構造(シクロヘキサン環)を持つことが特徴の特殊アクリル酸エステルである、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(CHDMMA)もご用意しております。CHDMMAは4HBAとは異なり、脂環式構造の影響で、水溶性がなく屈折率がやや高めであり、皮膚刺激性が極めて低い(P.I.I.:0.7)ことが特長です。
また、4HBAの類似の関連商品としては、末端水酸基ではなく末端エポキシ基を持つことが特徴の特殊アクリル酸エステルである、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE)もご用意しております。